マッチはパイプ喫煙に最適の火種である。
どんな高価なライターも昔ながらのマッチには敵わない。
新しいパイプのボールトップを焦がしたく無いからと
タバコの葉を購入しているタバコ屋さんが
オマケに送って呉れるマッチを使って火を付けた時、
その情緒と利便性を再認識してしまった。
マッチを擦る時の手先の感触が好きだ。
ロウソクの様に木の軸がゆっくりと燃えて行く様を眺め、
手先を振って火を消す瞬間が好きだ。
パイプで喫煙し香りを楽しむ穏やかで悠長な行為が、
思考回路を呼び覚まし私を鋭敏にする。
お香を香炉でたく薫りの楽しみでは、
香りの味わいを聞くと表現し「聞香 もんこう」と言う。
また、間接的に熱を加える「空薫 そらだき」と呼ぶ
平安時代から行われているたき方などもある。
何と奥ゆかしく文学的な表現なのだろう。
そして香炉や火箸などの道具が持つ造形美を鑑賞する。
それはパイプ喫煙にも相通じる。
工芸品としての美を求めたパイプを愛でながら、
繊細な香りを楽しむ趣は同じである。
源氏物語より
かざす扇に焚きしめし 空薫き物のほのぼのと 夕顔
そらだきの香 いと心にくく薫り出で 若紫
ただ簡便なだけの紙巻タバコの喫煙と同一視して、
未だ放出され続けている福島原発事故の放射能には無言で
嫌煙権だ間接喫煙だと騒ぎ立てる社会を嫌悪する。